わたしの父を愛した女たち [リエさん]
こんにちは~。ruruです♪
どうやらわたしの父は、そこそこモテるみたいです。
普通のお父さんは娘に女性遍歴など話さないようですが、わたしの父はある一件があってから、家族に包み隠さず話すことにしたようです。
現在進行形も含めて。
まずはその一件からお話しします。
ある朝の食卓で読まれたリエさんからの手紙
4人家族のある朝の食卓でのことでした。
父が食卓に腰かけていただきますを言った後、おもむろに母が一通の手紙を手にしました。
「〇〇市のリエさんからお手紙が来ています」
まるでFMラジオのDJのように爽やかな声で話し始めた母の手には水色のかわいい便箋が。
父がボフッと音を立ててコーヒーを吹きだしました。
そして母は読み始めます。
「あなたと会ったあの夏の日のことを私は今でもはっきりと覚えています。」
陳腐な書き出しで始まった手紙。
「あなたがあの時わたしにくれた微笑みは私の一生の宝物です。」
子供心にこれはただ事ではないぞと思いました。
一方的ではなかったリエさんの恋
わたしの父は研究職のような仕事をしていますが、月に2日ほどお酒を飲むところでピアノを弾いています。
リエさんはそこのお客様のようです。
母は家族への手紙を勝手に開けて読む人ではありませんが、父のプレイヤー名あてに来た手紙はマネジメントとして開封します。
リエさんのように手紙をくれるファンの方は少しですが他にもいらっしゃいます。
どのお手紙も父の演奏に対するお手紙なのですが、リエさんのお手紙は違っていたようです。
母が話す内容には、父と二人でお食事をしたこと。
ピアノのレッスンをしたこと。
その時二人の身体が触れ合ったこと。
港が見える公園のベンチでお話したこと。
わたしと弟は耳まで真っ赤にしてドキドキして聞いていました。
父はというと母をじっと見つめています。
母の意外な一言
子供心に、これは大変な修羅場がくるのではないか。
もしお父さんとお母さんのどちらか選ぶならお母さんにしよう。
とか、弟と離れ離れになるのはつらいけど生きていればいつでも会える。
などと目まぐるしく妄想が加速します。
娘のわたしから言うのは少しおかしいですが、父は背格好がすらっとしていますし、顔つきはたぶん十人並みですが手がきれいです。
いわゆるピアニストの指で、すっと伸びていて長めです。
わたしも父の手で頭をなでられると幸せな気持ちになる良い手です。
なによりも素敵なのは笑顔です。
小学校の父兄参観のあと担任の女性教諭から「お父様の笑顔はちょっと魅力的すぎてドキドキしちゃうわね」といわれたときに確信しました。
この人はその気になれば稀代の女たらしになれる人だと。
母が手紙を読み終えて、父のほうを見ます。
父は母を見ます。
その時のわたしたち姉弟の顔は><ってなってました。
そして母の口から発せられた意外な言葉。
「この方を愛していますか」
ええええええええええええええええ
もう一回
ええええええええええええええええ
不思議な夫婦
本当にびっくりしました。こんなことを言う母だったとは思ってなかったからです。
でもわたしがもっと驚いたのはそれに答えた父の言葉です。
「家族がいなければ愛していたかな」
ええええええええええええええええ
もうなんか「え」で罫線が引けそうです。
そしてとどめの母の言葉。
「それなら問題ないですね。家族がいますから。」
心からの笑顔で不思議な言葉を発する母。
「うん。そうだよ。家族がいるから。なにより君がいるから。」
当然のように答える父。
わたしが思ったのはただ一つ。
これが普通なのかしら。これが夫婦なのかしら。自分にできるのかしら。
母の回想
わたしが大人になってからこの時のことを母に聞いたことがあります。
そもそもどうしてあの手紙を食卓で読んだのか。
「いつもとは違うファンの方からの手紙だったし。ちょっと意地悪もしたかったのもあるけれど、一番はあなたたちに私たちのことをわかっていてほしかったからよ。」
「わたしたちのこと?」
「あの前の日にあなたが由美子ちゃん(わたしのお友達)のご両親の話をしていたでしょ。」
「ゆみちゃんのお父さんが出ていっちゃった話?」
「そう。それでね。お父さんはあんな風だからもしかしてあなたたちが不安になったり、勝手にいろんなことを想像したりしては困ると思ったの。」
確かにわたしの父はあんな風だから、不安になっていたかもしれません。
「人にいろんな人がいるように、夫婦にもいろんな夫婦がいるのよ。みんな同じじゃないの。同じじゃなくちゃいけない理由もありません。」
「それと、もしもわたしと子供達よりも大切に思う人がいるのなら、それは仕方のないことなのよ。」
「たとえ夫婦でも心を鎖でしばりつけてはおけないもの。それはわたしもそう。」
「だからお父さんは私にとって大切な人でい続ける努力をするし、私もその努力を惜しまないわ。」
「責任は大切だけれど、責任で人生をがんじがらめにするのはいいことだと思っていないの。」
「出会った時は、それまで二人がもっていた栄養で芽を出すけど、それからは二人で光を浴びながら愛を育てていくものなの。」
「つまり、結婚はゴールではないの。だから恋し続けられるのよ。」
まとめ
それまでわたしは母がそんなことを考えているとは思ってもみなかったので正直おどろきました。
でもその話を聞いて、妙に納得したのです。
だからお父さんとお母さんは、いつも生き生きしているんだ。
だからいつもあんなにお互いを思いやっているんだ。
夫婦の形にはいろいろあると思うし正解はないのでしょうけれど、わたしはこの両親でよかったと思います。
父の女性関係、というか父を愛した女の人はわたしが知っているだけでも10人ほどいます。
でもその話はまた今度。
あ もちろん母を愛した男の人のお話も。